第一話はこちらです
色あせた夢
彼は、日本で仕事をしながらマリーとの事を考えていた
３ヶ月前にKTVで偶然出会った時のこと
一緒にいるときの高揚感
マリーが望むことを少しでも叶えてあげたい・・・素直にそう思った
最初のうちこそ小さな援助でも彼女はとても喜んだ
そんなマリーと一緒に居るだけで「幸せ」を感じていた
あれは熱病だったのかな・・・
毎朝鏡に映っているのは「冴えない中年男」
そんな自分に、マリーが惚れるなんて事を期待しているのか？
婚約？
結婚？
お前はそれを受け入れていけるのか？
このままマリーと一緒にマニラでの生活を続けるのか？
東京が現実で、マニラは夢の中・・・・考えれば考えるほどそう思えてきた
しかし、味気ない東京での生活よりも、マニラでの生活は華やいでいるように思えた
マリーから、問題が持ち込まれていた
先日母親のビジネスのために購入したアパートの改装に思いの外、資金が掛かり改装が止まったというのだ。
フィリピンでは施工するオーナーが材料を買って、大工や労務者を日払いで雇うことが多い
その間の食事などの面倒も見るらしい
予想より、長い日数が掛かって、賃金がショートし始めたというのだ
彼から見れば不思議な話・・・・請負が普通の日本の感覚では、良くわからない。
働く側からすれば、工期は長ければ長いほどいい
毎日の仕事のノルマを上手く管理しないと、だらだらと工事が進まない
そんな基本的なことは、マリーの両親がやっているとは思うが・・・素人だからな・・・
その資金が、２０万ペソ・・・
これを追加で出して欲しいというものだった
じつは、どんなアパートでどんな内装にするのか・・・彼は見ていなかった
いや、正確に言えば「日本人が現場に行くと 何でも高くなるから・・・」といわれ、見せてもらえていなかった。
確かに、フィリピンの場合、外国人がバックに居ると知るとなんでも価格は倍以上に跳ね上がる
この国の悪しき商習慣は根強く残っていて、日本人だと知れば、暴利を欲しがるのが普通。
マリーの言うことも納得出来ないことは無かったが・・・
彼はそれも不満だった・・・
さらにマリーからの要求は増えていった・・・
大学の友人とビジネスをするために、中古でいいから移動用の車が欲しいと言い出した
なにやら、いろんな物販を考えているようで、Tシャツや小物を作って販売、納品や営業用の小型の車が欲しいというものだった
一々尤もらしい理由は言っているが・・・
中古車でも数十万ペソのものになる
「私がビジネスのパートナとして納得すれば出してあげる」
彼はそう言って、次回の渡航時に話あうことにした
翌週・・・彼は一週間程度の滞在予定でマニラ入りした
マリーと母親、通訳出来る親戚が空港に出迎えに来ていた
空港からタクシーで彼とマリーが借りて住まいにしているコンドに向かい、着替えもそこそこに通訳を交えて話し合いをする
マリーと母親が色々説明するが、かれはそれを遠くの出来事のように思いながら聞いていた
フィリピン人は計画性が無いといわれるが・・・自分たちの事業計画が「かなりの思い込み」だけで作られていて、やっているうちにどんどん問題が出てくることが「普通」と聞いていた
まさに目の前で話されている事項は、それだった・・・
「想定する」時に、あまりにも自分達に都合が良いようにしか考えないのだ
「う～～ん」・・・彼は唸った
買ったはずのアパートは火災で内装が焼けていて、安く買えたが・・・
内装も大きくダメージがあって、壁の塗り替え程度では補修が追いつかない
臭いを取るための洗浄も必要・・・
その上、保険金の支払いが未だらしく、前のオーナーが名義変更をオーケーしないらしい
結局、工事を始めたが何も進んでいない・・・というのが実態だ
これではいくらお金をかけても完成なんかしない・・・それが彼の直感的な感想だった
一旦話を終えて、皆で食事に行くことになった
近所のファーストフードの店
「これってフィリピンの常識なの？」
彼は日本語のわかる叔母さんに日本語で聞いた
「ちょっと問題ですね」
彼女が答えた
「私も詳しいことを聞いていないから・・・さっきはじめて聞いたことばかり・・」
続く・・・
※内容はフィクションですので・・・（汗）
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