第一話はこちらです
夜になって、彼はマカティーのコンドに戻ってきた
「あなたのコンドは、彼女が友達と遊ぶときの溜り場よ・・・」、通訳はそういった
そういう思いで部屋を見渡すと、そんな気もする
彼は小奇麗に使っているつもりだったが、来るたびに細々汚れて乱雑になっていた
ベッドに倒れこむ
「虚無感」「疲労」「困惑」・・・色々な感情が巡ってくる
こういう時の身の処し方を彼は知っていた
知ってはいたが・・・納得できない
驚き→怒り→受容→許し
大概の人間は、自分の中でこんなステップを通っていくものらしい
彼は未だ、驚きの中に居た・・・
彼は食事もしないで、ビールをあおってベットで横になった・・・
朝未だ薄暗いうちに目覚めた
腕時計を見ると、6時・・・マニラでは5時だ
とりあえずコーヒーを煎れて、一服した
昨日聞いた話しが、未だ整理できていない
しかし、心のどかで「そろそろピリオドを打とうという」そんな気になっていた
熱いシャワーを浴びて気分を変えよう
洗面所の鏡に映る自分を見て・・・
彼は、何か納得するものが有った
そこには、無精ひげを生やした顔の冴えない中年の男が映っていた
それこそ彼・・・そのものだ
気分を変えよう
彼は着替えて、ビリアモールのゴルフ場に出かけた
じっとしていると煮詰まってしまう
そこにはドライビングレンジがあって、ずいぶん前に来たことがあった
彼はそこでガラクタのような年代物のクラブを何本か借りて、打ち始めた
7番アイアンでターゲットに向かって無心に打ち続けた
何ヶ月ぶりかで、気持ちの良い汗をかいていた
気がつけば、3時間も打っていた
汗に濡れたシャツのまま、タクシーを呼んでもらい、コンドに戻った
シャワーを浴びる
鏡に映った彼は、もう朝の顔とは違っていた
昼食を近所で済ませて、部屋に戻った彼
「さてと・・・」
クローゼットに置いていた、大型のスーツケースを取り出すと、自分の衣類や小物をパッキングし始めた
「この生活も もう終わりだ」
そう思うと、寂しくもなるが・・・仕方が無い
自分のお気に入りだけの小物類を入れると、スーツケースは一杯になった
デジカメ、ノートパソコン・・・・
マニラで買った雑多なものは、置いておけば良い
この部屋は、マリーの名義で借りているし、13ヶ月の賃貸料のうち半年分は現金で支払った・・・
後はどうにでもするだろう・・・・
マリーともう一度会おうかどうか・・・彼は迷っていた
話し合いをしても、恋人が居る女では解決は無い
知人に相談したが、裁判しても取り戻すのは容易ではないし、弁護士に金を取られるだけで、何もならないということだった。
さらに「ポケットから出した金は絶対に戻ってこないのがフィリピン・・・」と聞いていた
怒りは収まらないが・・・彼にはどうすることも出来ない
食事に出かけ、マカティーの日系KTVに行ってみた
そこには若くて着飾った女たちが居た
何人かをローテーションで回してもらいながら、彼は飲んでいた
いくら呑んでも、頭が冴えて酔えなかった
誰かにすべてを話して、楽になりたかった・・・が、それも出来なかった
当たり障りの無い会話・・・
「出身地は何処ですか?」
「何処に住んでいますか?」
マラテとマカティーではKTVも全く違った・・・
マラテは彼のような「観光客」が殆どだが、マカティーは「企業の駐在」が多かった
だから、質問も
「何処の会社ですか?」なんて聞かれる
女の子も、おっとりしている感じだった・・・
今の彼はそれどころではないのだが、頭のどこか冷めた部分でそんなことを考えていた・・・
そんな自分に彼は苦笑した
日付が変わったころに彼はコンドに帰りついた
ドアロックをはずすと、明かりが漏れてきた
「おかしいな・・・消して出たはずなのに・・・」
中に人影があった
中に居たのはのは、マリーの遊び仲間のバクラだった
彼が入ってきたのを観てギョッとしたようだった
当たり前だろう、日本に居るはずの主が急に帰ってきたのだから・・・
「誰だい? 何故鍵を持っている?」彼が声をかける
奥から、マリーが出てきた
「何でここにいるの? マニラに来るなら言ってくれればいいのに・・」
マリーは、努めて平静を装う風だった・・・
まあ、部屋に来て彼の大型スーツケースや、パソコンなどの小物が荷造りされているのをみて、マリーも何かに気がついていたのだろう
期せずして、マリーと話し合うことになりそうだ・・・・
続く・・・
※内容はフィクションですので・・・(汗)
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